堕落シール、でひゃあっ!
エキスちゃんが親友のおとちゃんとビデオ通話をしている。
おとちゃんの髪の赤く、やや焼けた肌が画面に映し出されている。
「ねえエキスー、最近このめっちゃ可愛いシール流行ってるんだけど知ってる?」
「あー、それあたしがつくったやつだわ!」
「は!?マジで?マジで言ってんの?」
「そうだよ!それ何を隠そうこのあたしが作ったのさ!」
「じゃあ、明日買い物行こうよ!それで色々教えてよ!」
「いーよ!じゃあラボ姉たち、みんな連れて行くね!」
——翌日
おとちゃんが雑貨屋の前で待っていると、4姉妹とアール所長がやってきた。
遠くから見てもエキスちゃんが大騒ぎしているのがわかる。
「…おとさん、実はこのシール、私も理解ができません。エキスが普通のものを作るなんて」
データちゃんがエキスちゃんに視線を合わせた。
「やっぱりそうでしょ!めっちゃ可愛いのまではわかんのよ!なんで流通してんの!?」
おとちゃんも驚いた表情をしている。
「あたしだってやるときはやるんだよ!!」
エキスちゃんは腕を組んでえらそう。
「…でも…いつも…なんか……どこか変な動きをするものが………」
ラボちゃんも疑惑の視線を送っている。
「でも、可愛いからいいじゃないですか〜♡私はこのシール好きですよ〜」
オブちゃんはシールを見つめている。
「さすがオブ姉!わかってくれてる!」
「…普段の行いが悪いから疑いを持たれるんです。」
「…おとちゃん…先日は…雨に雹に雪が……研究室の中に降ったんです…。エキスちゃんから…聞いていますか…?」
「えっ!エキス、あんた研究所で何をしているの?可愛いものつくってたんじゃ…」
とうとう、おとちゃんまでが疑いの視線をエキスちゃんに送り始めた。
アール所長はおとちゃんの肩に乗っている。
「えー!ちゃんとしたものも作ってるよ!ブザーの鳴らないブザーとか!」
「…それはもうブザーではありません」
「なにそれ!マジでうけるしめっちゃ可愛いんだけど」
「…可愛いんですか」
おとちゃんの反応をデータちゃんが記録した。
雑貨屋の前を見るとシールがたくさん並んで販売されている。
フックに吊り下げられて陳列され、デザインがわかるようになっている。
「ほら、あそこにたくさんあるよ。でもねあたしは機能部分だけ作ったくらいなんだよねー!」
「……じゃあ…この絵は……?」
「そう、絵はね、メーカーが変えて出してるの!」
ラボちゃんがシールを取って表面を数回押した。
<はあ〜今日はやるきでね〜>
<かえりた〜い>
シールからやる気のない声が響いた。
「やっぱこの『堕落シール』めっちゃ可愛いわ」
おとちゃんの顔から笑みがこぼれた。
「この動物シリーズも同じ声なんですか〜?」
「そうそう!全部同じ!」
<いつも元気なわけじゃないよ〜>
動物から声が流れる。
「…なんか切実ですね。」
データちゃんが言うとみんながクスッと笑った。
「データさんがいうと面白いのはなんでしょうか〜?」
恥ずかしそうにデータちゃんは目線を外した。
「そうだ、ラボ姉、ちょっと押してみて!」
「…このシールで……いいですか…?」
何回か押すと。
<シャー!>
シールから怒った猫の声が響いた。
「ひゃっ!」
「1つだけメーカーでも音を入れられるようにしたんだ!」
エキスちゃんの髪に金色が混ざり明るくなり始めた。
「実は裏コマンドあるんだよね!」
「どんなコマンドなんですか〜?」
「シールを円を描くようになぞってBAだよ!」
「エキス、待った、BAってなに?」
おとちゃんが反応した。
「あるよ、ここに。」
エキスちゃんが台紙裏の上部の端っこのにあるBAを指さしている。
「ちっさ!!こんなんわからんわ!」
おとちゃんが表面をなぞって感覚を確かめている。
「さあ。ためしてみよう!の時間だよ!!」
エキスちゃんの髪が金髪に輝いている。
「…なんですか、その某教育番組でありそうなタイトルは。」
「いいっしょ!じゃあやめとく?」
「…やりますけど」
「あら、めずらしくデータさんが負けました〜♡」
「…ほら、やりますよ」
データちゃんの口に力が入っていた。
「承認。承認。」
アール所長がプカプカ浮きながら承認している。
データちゃんがシールを1回転。そしてB、A。
シールから声がした。
<ら〜ぼちゃん♡>
「ひゃあっ!!!」
【ブオー】
冷却ファンとともに、ラボちゃんの耳が赤くなった。
「エキス、なにこれ、マジ可愛いんだけど!」
「でしょ!マジすごいっしょ!?」
オブちゃん、おとちゃんもコマンドを入れた。
<ら〜ぼちゃん♡>
<ら〜ぼちゃん♡>
【ブオオオオーーーー!】
冷却ファンが大きな音を立てた。
「…みなさんで……連打…しないでください…」
ラボちゃんは手で顔を隠している。
「ラボちゃん、照れてんのめっちゃ可愛い!」
おとちゃんがニヤけてラボちゃんを見つめていた。
【ブオーー!】
「このエキス謹製ってかいてあるのは何でしょう〜?」
オブちゃんがコマンドを入れた。
「あ!そのシリーズは!」
エキスちゃんの髪が金髪ピンクメッシュになっている。
<もふもふさん♡>
「…ちょ、ちょっとエキス!いつ録ったんですか、この声」
「秘密だよ、データくん。ちっちっち」
エキスちゃんは人差し指を振っている。
「承認済み。」
アール所長が承認した。
「…もふもふさんと会ったの最近ですよ。所長も承認しないでください」
データちゃんは顔を膨らませている。
おとちゃんは満足しつつ、シールを爆買いしていた。
「今日はみんなの可愛いの見れて超楽しかったー!バイト先の同僚にもコマンド教えてあげるねー!」
「ひゃあーーっ!」
「…やめてください!」
普段は声の小さなラボちゃんとデータちゃんの声が大きく響いた。